あの場所へ

3.夢と希望


部活が終わった後,
早く選抜されたことを知らせたくて,
図書館への道を全力疾走していた。


七海は普段とは違い,
頬杖をついて外を眺めていた。
俺は,ゆっくりと七海に近づくと,
読んでいる本を上から盗み見た。

「再生不良性貧血?」

七海は俺に気づいて
慌てて本を閉じると,
「もう,部活は終わったの?」
と小さい声で聞いた。

「おう。帰ろうか。送るよ。」
俺は,七海の額を指で軽くはじいた。

いつものように七海と歩いていると,
「ねえ,何かいいことがあったの?」
ニヤニヤしている俺の顔を不思議そうに覗き込んで,顔を傾けてたずねてきた。


「あああ!!すんごく,いいことがあった。」
そういうと今日の部活での話を聞かせた。



「へぇ。すごいね。上妻くん,走るのすきそうだもん。それで,上妻くんの明るい未来は開けてきそうだね。どっかの大学の陸上部の先生が見に来てて,そのまま大学にスカウトさせて,ほら大学駅伝とか箱根駅伝とかでて,実業団にはいって,マラソンに転向して,
末はオリンピックのメダリスト!!絶対,有名人になるよ。上妻くん。私,テレビの前で,めっちゃ,応援してるの。旗とか,横断幕なんて作って。」

「おいおい。話が飛ぶよな。話がでかすぎるだろ。」


七海は,目を輝かせながら
「いいじゃない,たくさんの可能性があるんだから。上妻くんは,そんなこと考えないの?夢はみても,だれも困んないんだから。それに向かって,今頑張ってるんだから。」
と,恥ずかしげもなく力説する。


俺は,そんな七海をみていると,なんだかどんなことも実現しそう思えてきた。

本当に,お前は不思議な奴だな。
俺はひとりで「やれば出来る・・・・」とぶつぶつ言っている七海を見て,変な自信が身体の奥の方から沸いてくる感じに戸惑いながらも,未来が開けた気持ちになっていた。


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