あの場所へ
4.暗雲
「そういえば,七海。お前,どうして走らないのか。 体育祭のときはめっちゃ早かったのに,もったいない。」
今まで,元気いっぱい,
いろんなことを力説していた七海が
急に黙りこくった。
そしてしばらくの間があった後に
「実は・・・私,不治の病で・・・
運動するのはドクターストップがかかってるの。」
と口を開いた。
俺はいきなりの告白に,
なんていっていいのか。
すぐに声がでなかった。
「ハハハ!!」
「えっ」
「びっくりした? そんなことないじゃない。駄目なんだ。私。みんなと一緒に何かするのが苦手で。体育祭のときは,中学で一緒の友達が実行委員で逃げられずに,今回だけっていう約束で走っただけ。部活をするよりも,本を読むほうがすきなの。」
そういうと,七海は笑顔で俺を見つめた。
「お前さ,俺のこと,からかうの楽しんでるだろう。」
ちょっと不機嫌な声でいうと,
「うん。だって,上妻くん,単純なんだもの。」
そういうと,背伸びをして,
俺の両頬をギュっとつまんで,
「変な顔!!」
というと,背中を向けて俺の前を歩き始めた。