あの場所へ
6.紫陽花の頃
島には,冷たい風が吹き荒れて
あっという間に冬がやってきた。
そして暖かい南風が春を呼んできて,
俺は七海を残して,3年に進級した。
3年の上がってから,
七海は連絡が取れないということで,高校を除名されたらしいと人づてに聞いた。
それが真実かどうかは関係なかった。
ただ,今は七海の姿をみたい。
この手でつかんでいたい。
それだけだった。
しかし,
七海からの葉書が届く間隔が徐々に長くなっていき,この1週間には1通も届かなかった。
その代わり,1通の封書が俺の手元に届いた。
裏には「門倉香里」と見知らぬ住所が書いてあった。
紫陽花が咲き乱れ,
雨がジトジトと降り続けて,
気分を憂鬱にさせる
梅雨の真っ只中の一日だった。
もう,
七海の顔を見れなくなって,
半年が過ぎていた。