あの場所へ

2.躊躇


数日後,俺は本土の病院の前にいた。

どんな状態で七海がいるのか,
不安で押しつぶされそうで,
玄関から一歩進むことが出来なかった。

そんな俺の様子を不審そうに眺めながら,何人も横を通り過ぎていった。



「おい,上妻じゃないか。」

目の前に,
陸上部顧問の谷口先生が立っていた。



「先生。どうして・・・」
びっくりした声を出した。



「いや,ちょっとここで検査があってな。そういう,お前こそこんなとこ突っ立って,何してんだ。さっきから見てて,似てる奴がいるなと思っていたんだよ。ま,邪魔だから,こっちに来い。」

俺は,
谷口先生の引っ張られるようにして,
病院の中に連れ込まれた。



「どうした。青い顔をしてるぞ。」
俺は,先生に七海のことを話した。



「そうか。だけどよ。今,門倉に会ってもいないのに,うじうじ考えたってしょうがないだろう。会ってから先のことは考えればいいんじゃないか。白血病であっても,今を大切にしなけりゃ,後悔するぞ。もし,先が分かってるのなら,尚更,この1分1秒が大切だと思うけどな。島と本土は思った以上に,遠いぞ。すぐには来れないからな。何かあっても・・・」


先生はそういうと俺の肩をたたいて,

「行くからな。いつまでもそこに座ってんなよ。」

と診察室へ入っていった。



俺は意を決して,
七海の病室へ向かった。

そこは,
厳重に管理されている無菌室だった。

七海は,
ベットに横たわり
静かな寝息をたてていた。

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