あの場所へ

2.再会


俺は小さな店のドアを開けた。

「いらっしゃいませ・・・・」

カウンターの向こうで,
背を向けたまま何か準備をしていた女主人が,こちらを振り返った。


「上妻くん・・いらっしゃい・・・
 よく来てくれたわね。」

その人は,俺の顔をみるとびっくりしながらも迎えてくれた。そう,ここは七海のお母さんがやっているバーだった。

他の客が何人かボックス席とカウンターで飲んでいた。俺はカウンターの隅にすわると,ウイスキーのロックを頼んだ。


香里さんは,俺の前にグラスと突き出しを置くと,

「ゆっくり飲んでってね。」

というと,他の客を相手をしにいった。

夜が更けるに連れて,
客が一人ひとり席を立っていき,
俺と彼女だけになった。



「私も飲んでいいかしら。」
そういうと,グラスにブランデーを注ぐと,俺の隣に座った。



「何年ぶりかしら。七海のお葬式ぶりだわね。元気にしてたの?」



「はい,今年社会人になりました。」



「そう,活躍は聞いているわよ。お店に来る人もよく話をするから,上妻くん,有名人だものね。七海もよく言ってたわ。きっとすごい選手になるってね。あの子には未来が見えてたのかしらね。」

すると,俺の前に一つのノートを出してきた。

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