あの場所へ
Ⅳ.想い
1.豊山で
俺は豊山を上がりきる
途中の空き地へ足を進めた。
「ここは,変わってないな。」
そういうと,
俺はタバコを取り出し火をつけた。
暗くなり始めた空にむかって,
タバコの煙が一筋漂っていく。
この煙が天国まで続いていくのなら…
俺はどうにもならないことを考えてしまう
自分に自嘲しながら,
ゆっくりと時間をかけて
タバコを吸った。
そして大きな岩に腰をかけると,
そのまま寝転んで,空を見上げた。
「そろそろ,星が輝き始める頃だ。」
俺は目を閉じた。
俺は,体育祭のあと,
七海が毎日放課後を
図書室で過ごしていることを知ると,
部活が終わると図書室へ通い
七海を探した。
しかし,七海の姿を見つけても
なかなか声をかけるきっかけがなく
そのまま二週間が過ぎたころだった。