一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season

「こ、皓さん…！」

「少しだから…暁もね、よくこうして俺が泣いてるとぎゅっでしてくれたんだ。優しい感触、やっぱり似てる。」

目の前の皓さんはあたしよりずっと大きいはずなのに、なぜか小さな子供みたい。

「…ごめんね、愛ちゃん。」

初めて聞いた皓さんからの言葉。

何に対して謝ってるの？

なんで謝るの？

あたしを恨んでいるんじゃないの？

この人、本当にわからない。

だけどほうっておけないあたしも変だ。




「愛ちゃん、愛ちゃん！」

授業が終わり、図書館に向かおうと廊下を歩いていると見なくても分かる人物が駆け寄ってくるのがわかった。

「どうしたの？葉ちゃん。」

たまに一緒に図書館で勉強してるけど、最近はお兄さんの梓先輩が家庭教師をしてくれているらしい。

「兄貴のやつ、すげえ教え方下手なんだよね！」

なんて、優兄が家にいないあたしにとっては羨ましい限り。