一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season

その気持ち、あたしにはすごくわかる。

たとえ本当の親子や兄弟じゃなくても、今のあたしにはお父さんやりっちゃんたちが必要だ。

どんなに居心地が悪くなったって、自分を大切に育ててきてくれた家族なんだもん。

「ごめんな、お前の気持ち、ちゃんと考えてやらなくて。後悔しても遅いけど、本当に悪かった。だけどこれだけは信じてほしい。お前は僕たちの大切な家族で、息子だよ。沙和だって本当にそう思ってた。」

皓さんは誠司さんを強い視線で見たまま、うっすらと目に膜がはっている。

「暁のことも大切に思っててくれてありがとう。」

その言葉で皓さんの目からは涙が溢れた。

まるで小さな子供みたいに涙を流す皓さん。

「愛も、いろいろ黙っててごめんな、いつか言おうって思ってたんだけどなかなか言い出せなくて。」

誠司さんは今度はあたしに向き合う。

「正直言って、出て行くと言った暁を止めなかったのは心の中で少しでも暁には苦労のない人生を送って欲しかったからだ。」

苦労ってきっと２０歳で親になることだよね。

そんなの当たり前だ。

いくら頑張ったって努力したってどうにもならないことはたくさんある。