一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season
それからどうやって帰ったのか覚えてない。

そばにあったカバンを掴んで、顔も見ずに部屋を出た。

幸い恵海ちゃんや涼太君はいなかったからよかった。

声をかけてきたりっちゃんや直君に何も言わないで一人で部屋に入って、ベッドに潜り込んだ。

終わっちゃった。

全部、終わっちゃった。

ううん、違う。

あたしが終わらせちゃったんだ。

間違ってるって言われるんだろうな。

だけどこのまま浅丘君のそばにいるのは苦しすぎるよ。

浅丘君の優しさが辛くて、自分が余計醜くなる。

大好き、大好き、…

だいすき。

なのに、自分からこの道を選んだ。

けど、これでよかったんだよね。

だって今のあたしじゃ浅丘君のそばにいたくない。

いられないから。

自信とか、釣り合いとかそういうのじゃなくて、

「愛、携帯うるさいよ。」

いつのまにか部屋に入ってきていた玲。

あたしのカバンを持ってきてくれたんだ。
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