一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season
電話の主は見なくてもわかる。

きっと浅丘君がかけてきてくれてるんだ。

「なんかあったの?」

「ううん、あたし、勉強しなきゃなーって!」

「は?今更?遅すぎでしょ。余裕ないくせに。」

容赦ない玲さんの言葉、重ーく受け止めさせていただきます。

その日からあたしは狂ったみたいに勉強した。

それまでもサボってたわけじゃないけど、本当に寝る間も惜しんで勉強した。

「愛、クマできてるよ、大丈夫なの?」

いつもはもっと勉強しなさい!って言ってたミカリンまでもが心配してくれる。

「平気平気!それよりミカリン、ここ教えてくれないかな?」

必要最低限教室からは出ない。

移動教室とトイレ以外は出ない。

だって廊下に出たら、会ってしまうかもしれないから。

どんな顔して会えばいいのかわからない。

また逃げてばかりだけど、今のあたしにはそれしかなすすべが思いつかないんだ。
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