一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season
「パパ…ママ…」

最後の一文まで読み終えた時、自然と口からこぼれていた。

暁ちゃんと唯ちゃんじゃなくて、あたしのパパとママなんだ。

会ったことのない二人。

記憶の中にいない二人。

手の暖かさも、腕の柔らかさも、匂いもなにも知らない。

どんな顔で笑ってたの?

どんな顔であたしを見ててくれたの?

わからないことばっかり。

だけど確かに、二人はあたしを産んでくれた、あたしの両親なんだ。

人からは何度か聞いた。

二人がどんな風にあたしを大切にしてくれてたのか。

どんな風に思ってくれてたのか。

直接二人の想いを知ったのは初めてだ。

十八歳のあたし、ちゃんとこれから生きていく。

二人のぶんも、生きていかなきゃ。

絶対幸せになれるよ、ううん、未だってすごく幸せ。

あたしもいつか、誰かを幸せにできるように、みんなの笑顔を作れるようになるから。

右手に増えた2つの宝物。

そっと2つに触れると、暖かい気がした。
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