一ノ瀬さん家の家庭事情。LAST season
だけど本当は優しくて、なんだかんだあたしのこと心配してくれた。

嫌がらせを受けた時、真っ先に保健室に来てくれたり、浅丘君とのことで悩んでた時話を聞いてくれた。

十八年間同じ部屋で育ってきた大事な存在。

そんな玲が今日から部屋にいないと思うと寂しい。

寂しいに決まってるよ。

「玲、困ったことがあったらすぐに…」

「わかったってば。律兄どうせ電話してくるからその時言うよ。もうそろそろ飛行機の時間だから行くね。」

玲がスーツケースを持ち直した。

「みんな、ありがと。」

玲が最後に言った言葉。

いろんな意味がこもってた言葉。

あの玲が素直に言ったありがとうに、本当に玲は行っちゃうんだって思った。

そして玲は本当に行っちゃった。

「行っちゃったね。」

直君が空を見上げながら言う。

「次は愛姉の番かー…」

そうだ、あと10日後にはあたしも家を出る。

東京で暮らすんだ。
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