恋愛最前線
子供じゃない
「岩倉」

智身は午前の講義を終えると、午後は何もなかったから 帰るのみだった。

「江戸川君。どうしたの?」

「時間ある?」
「うん。あるよ」

「昼飯付合ってよ」

宏次朗は学食はイヤだといって、校外の洋食屋に入る。

「なに食う?」
「グラタン」
「決めんのはやっ。ヒロコにも見習わせたい」

宏次朗は笑いながら、
俺も決めたと ウェイトレスを呼ぶ。

「ハンバーグの目玉焼きのせ。アイスコーヒーとグラタンとアイスコーヒー」


ウェイトレスはオーダーを繰り返すと、少々お待ちくださいと 厨房へ向かう。


「信一さ、あのこにふられたんだよ。笑」

「誰にでも告白するんやなぁ彼は…」

2人は先に運ばれて来たアイスコーヒーを飲む。
まだ 夏は終わったとはいえ 熱い…。


「話あったんやないの?」

「うん…。弟の事だ…。ごめん。俺が口だせる立場じゃないんだけど。親父がかぎまわってる」

「…江戸川くんにも迷惑かけとるんね…」

「いや。岩倉が悪いわけじゃないとおもってんだ。アイツが、勝手に帰らねんだろ」


実際のところ、その通り…


宏次朗は、智身に封筒を渡す。

「なに?」

「アイツの生活費…受け取りにくいと思うけど…岩倉に迷惑かけてんのは事実だかなら。頼む。返さないでくれ」

仕方なく 智身は封筒を 受け取るが

「江戸川くん…これは、今回だけしかうけとらない。彼も帰ってもらう」

「アイツが素直に帰れば問題ないがね。…つーか。ほんとアイツあのばかでかい家にいるの可哀相だからな…」

智身も同感だ…

「家庭のことに…口だししてごめんなさい。江戸川くんち、普通じゃないと思う…」

「昔からだ…。母親が死んでからは余計にひでぇよ。…」

「惣市くんさみしいよって言ってたよ…。あそこに、一人で居させたくないって…思ってしまったの…」

食事が運ばれてくるが 2人とも 箸はすすまない。

「だけど、あいつはまだ…ガキだよ」

「そうやって、お父さんや江戸川くんが構うから、ずっと彼あのままなんだよ…」

「…かもしれないが。岩倉にはわからないこともあるだろ」
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