恋愛最前線
智身の帰りを待つ。

いつもどおり。

夕食を終えて、ソファでくつろぐ。

惣市は、智身の目の前に、手提げ袋を差し出した。

「なんなん?」

「あけて」

大きさ、形から、アクセサリーだとはわかったが・・・。

「貸して・・・。後ろ向いて」

惣市は、ネックレスを取ると彼女に着ける。

「うん。似合う似合う」

「どうしたの?」

「かったの。ダイジョブ、盗んでないよ」

「お金、・・・お父さんの?」

「違うよ。明良のとこでバイトしてる。言ってなかったけど。・・・給料でたから・・・。あと、これ」

惣市は、茶封筒を智身に差し出した。

何度目の封筒だ・・・

中身は、3万円。

「なにこれも」

「さっきから、なになにばっかだな・・・」

惣市は笑う。

「生活費。今日は、それ買ったから少ないけど。これからはもう少し入れるから」

智身は、

「・・・惣市君。気持ちは嬉しいけど・・・。貰えない。まだ、中学生なんだし、ホントは、バイトだってしちゃだめだし・・・」


惣市は、黙ってしまった。

「もっと、喜んで貰えると思った・・・」

「嬉しいよ。すごく、嬉しい。でも、まだ、こんなことしなくていいよ・・・」

「じゃあ、どうしたらいいんだよっ!?」

惣市は、怒鳴る。アクセサリーの入っていた袋、箱を床に叩きつけた。

「いらねーなら、すてればいい」

惣市は、立ち上がるとマンションの部屋を出て行く。

「惣市君ッ」

彼は、彼女の言葉を聞かずに、出て行ってしまった。

「待ってよ・・・、もぅ・・・待ってよ・・・」

智身は、なんだかわからず・・・

床に座り込んだ。

床に、1粒、2粒、涙が落ちた・・・。

< 48 / 77 >

この作品をシェア

pagetop