恋愛最前線
意外に矢島は、惣市の居場所をつき止めるのに時間をかけてしまった。

学校から、保護者宛てに連絡がきた…


たまたま 道弘は出張で国外にいた。


この出張が終わって 落ち着いたら、智身と惣市に全てを説明し、失礼を謝るこころづもりでいたのだ。


矢島は、道弘の心情を汲み取ると…


自分で収められる事は、収めよう…。


先ずは智身のマンションへ向かい 彼女を待った。

なんて事だ…

彼女の元にいない…

「自宅に要ると思う…絶対お兄さんや友達には頼らないと思います」

「しかし、それなら家政婦の方から連絡があっても…」

「別に私がいてもいなくても、彼の素行に家政婦さんもいちいち口だししてなかったんですよね?」

「…えぇ…」

「きっと…家にいる」


そして、彼女の予想通り…

家政婦のフミは、惣市の素行においては 今さら いちいち 報告するようには 旦那様から言われてませんから…と

惣市の部屋に2人を案内した…。

ドアを開ける。

「なにぃ?腹ならへってないよ…」

ベッドに潜ったまま フミと勘違いしている…。

智身が葉山で見た 彼の使っていた部屋のようだ…


心の乱れや生活の乱れは、部屋の乱れ方に比例するようだ。


ブラインドは締切。

矢島と智身は顔を合わせる。

矢島は 後ろに下がる。

智身は、ベッドに近付く。
彼のかぶる布団をはぎ取る。

「なんだよ…フミさん…」
惣市は枕を抱いてうつぶせになっているから、智身だとは気付いていない…


「なにしとんのやっ?!」

惣市は、びっくりして、起き上がる。

「なにしとんのよ…」

「…」

「学校行ってないんやて?バイトも行っとらんのやろ…」


ドアを締める。

矢島に 態度で 私に任せて下さいという 意思表示だった。

智身は、惣市の隣に座る。


「もうどうでもいいよ…」

惣市は、窓をあけると タバコを咥える。

「何をすねくれとるの?なんで、前を向いてくれない?」

「俺は…この一か月やったよ…」
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