恋愛最前線
「頑張ってたって思ってるよ」

智身は惣市の隣に座る。
惣市は起き上がると窓を開けて タバコを咥える。

どうやら 最後の一本らしい。

煙草の入っていないケースを絞り込むとゴミ箱に投げるが、へりにあたって、外れた。


「せっかくこの一か月頑張ったのに…また、元通りなの?」


「説教しに来たのかよ…親父か?兄貴か?頼まれて見に来てくれたの?」

惣市の嫌味な言い方に 智身は惣市の頬をひっぱたいた。

バチンッ…

「ってぇな…」

惣市は吸ったばかりのタバコを消すと、

智身を押し倒して、乱暴に衣服をはぎ取る。

「俺のこと可哀相って思ってんだろう…。親の愛もない…。夢もない。
…」

そういいながら、乱暴に彼女を扱う。

「思ってた。だけど、毎日毎日見てる度に思わなくなったよ…乱暴だけど、すごく淋しがり屋で、ほんとは優しくて繊細で…でも、いざって時は助けてくれる…私だって…3年も見て来たんだよ?」

「…」

「ほんとのアナタは、私と居る時のアナタなんだって…」

彼女の胸元に 彼のつけたネックレスが見えた。

彼は、彼女を乱暴に扱っていた両手を自分の顔にあてた。

そして
泣き、叫んだ…

部屋の壁を殴る。


物を投げる。


部屋中が目茶苦茶になる…

異常さに外にいた矢島がドアをノックした…

「だいじょぶですか?」

智身は
「だいじょぶです」

といった…。

泣き叫び 物を壊し続ける惣市を、
抱き締める…

「惣市くんっ…」

彼もまた、彼女に抱き付く。

大きな体が 小さく見える…

「だいじょぶ…だいじょぶだから…」

「…っはぁ…」

彼は、涙を堪えているが…

「泣いちゃえ。ね。…ごめんね…独りにして…」
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