恋愛最前線
ガラッと 惣市は和式の襖を開ける。

智身の手を握り、先に彼女を奥に座らせた。

「らはーりへー」

惣市の態度に 若干 緊張気味の智身…

「失礼いたします」

飲みもの、先付けが運ばれる。

「ちょっとずつださねーで。一気にだしてよ」

道弘は
「悪いね。腹が減っているようだ…」


しばし シーンとした時間と空気が流れる…

「まあ…食べなさい。食べながら…話そう」

智身は…箸をとるが、胃を通り越して、どこに食べているかわからない…
惣市は普通に食事をしている…。

「智身さん…先日は悪かった…突然あのようなことをしてしまった。嫌な思いをさせてしまったね。すまなかった…」

父親は、飲んでいた グラスを置くと 両手を膝にあて 智身に頭をさげる。


智身は
「頭なんか下げないでください!」

惣市は
「謝るくらいなら最初からヤルナヨ…」

智身は惣市の膝小僧にパンチを入れた。


「今朝ね、海外出張から帰ったばかりで…挨拶というか、こういう席を持つのがなかなか…時間がとれずこんなに日にちがたってしまった…」

「もう…気にしてません。私も、お父様のお考えも最後まで聞かずに、失礼な態度を取ってしまいました。すみませんでした…」

智身も、自分の失礼な対応を謝罪した。


「…何から話せばいいかな…」

道弘は、タバコを胸ポケットから出す。

一本 口に咥えるが ライターがないようで、ポケットを手で触る。

惣市は100円ライターを、テーブル越しに滑らせた。

「悪いな…」

やっと タバコを吸える…。

少しリラックスしたようだ…

「…君の…智身さんのご両親は、お元気ですか?」

道弘は 智身と惣市が 大体の話の大筋を知っている事は…知らないのだ。「はい。元気です。私も半年に1度くらいしか帰りませんから…」
「そうか…。元気なら、何よりだ…」
惣市は、このままじゃ 全て話が終わるのに 何日かかるのかと…
「親父?」
「どうした?」
「親父たちの世代の話はわからねーけど。答えはかわらねーから。…」
道弘は
「なんで知っている?」「兄貴が調べたみたいよ」
道弘は、参ったなと言った…
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