恋愛最前線

「何もないのは私だけだった…」
道弘は、瓶ビールを 自分のグラスにつぐ。

「泰造とやす代は、多分…想い合っていたんだろうな。…私は意地で彼女だけは、手にした…彼女と一緒に死に物狂いで頑張ったのに…。金ができたら…アイツは逝ってしまった…」


切ない話だ…


「…俺…母さんが死んだのは、親父のせいだって…思ってる…。…」

惣市に
「…そうだよ…無理をさせ過ぎた…。アイツは幸せだったのか…今じゃ、調べるわけにもいかないからな…」


「母さんが最期に…。お父さんを信じて３人で幸せになれ。自分は幸せだったって…言ってた…俺にはまだわからねぇ…」

2人の会話にずっと
耳を傾けていたが、

「きっと…やす代さん…お父様のことも。惣市くんも宏次朗くんも。家族の生活に満足してたんじゃないですか…。うちの両親は、お父様のお話を伺うかぎり、一緒になったきっかけは…そのときは、まだ家族とかそういう愛のかたちがわからなかったとおもうんです。でも、今は…私は生まれて記憶がある中で…幸せそうな両親しか見てませんよ…」



「私は、学生時代から30年余り…泰造にもやす代にも…謝っても謝っても言葉がでない。足りないいと思って生きて来た…。別にこれが行って悪さをしているから学校に寄付してるんではないのです。自分への償いなんです…。なかなか男ですし、言葉がたりないようで、これにも余計な憶測をさせてしまっていたらしい…」

道弘は惣市を眺める。
その目は、もぅ 輝きは失ってはいるが…

親から子への愛情は… 失われていなかった…。

「…親父…考え過ぎだよ…いろんなこと…。すげー小さい頃にみんなでいつも旅行いったじゃん。覚えてる？」

「覚えてるよ。まだまだ…貧しかったころだなぁ…。お母さんが弁当作ってな…」

「俺はああゆう生活がしてーよ…バイトして…金稼ぐのすげー大変だと思った…ありがとう」

惣市も精一杯の言葉じゃなかったのか……


「親が子に何かするのは、当たり前だ…」

道弘は、タバコを探すが。ない。

さっきのが 最期の一本だった。

惣市は先程 握りつぶして 形の崩れたタバコを渡した。