恋愛最前線
母親が、死んだのは彼が12歳、中学に入学の時だった。

父親は、丁度、海外出張で、死に際にはいなかった。

「お父さんのゆう事を聞いて、2人仲良く、ね・・・」

家庭より、仕事を優先して生きてきた父。

病床で、最期まで、弱音を吐かずに、独り戦う母。

「あいつのせいで、死ぬんだ」

彼は、そう思っていた。

父親は、一代で 現在の地位を築いた。

昔は、母と二人三脚で頑張って来たらしい。

惣市が物心つく頃には 父親は 家庭に居ない人間だった。


それが 普通だった。

母、兄、祖父母、家政婦…。


彼の家族の中に 父親は入っていない…。


母が倒れた時も 居なかった。


死ぬ時も 居なかった。

「自分はこんな男にならないぞ」と 心に誓った。


母は32歳という若さで、この世を去った。


幸せだったのか…。

今となっては わからない…。


ただ…。


未だに 母が居ない事が 寂しくなる。


マザコン…?


絶対 違うと自分では思いたいが…。


遠くに 別荘の明かりと 花火が見えた。


初日の今夜は 盛り上がるんだろうな…


うるさい場所にはまだ 戻りたくなかった。


砂浜に横になった。


良い風…


< 7 / 77 >

この作品をシェア

pagetop