国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
早速水晶を手に持ってみたニーナは、しばらくすると違和感を覚えた。

「これ……とても温かいわ」
「本当? さっき兄さんが持った時、特に何も言ってなかったけど……確かに温かいな」

フェルディナンドも水晶を手に取り、目を丸くした。

「それに、なんだかすごく懐かしい感覚がするの」

ニーナは水晶を持ったまま、そばにあった森の土に触れた。

その瞬間、水晶がほんのりと光りだした。

「フェル! 見てちょうだい。瘴気が……!」
「これは……! 瘴気が水晶に吸い取られている!」

黒い靄が、光り輝く水晶へと吸い込まれていく。
そしてあっという間に靄は消え、靄が消えると水晶も光を失った。

あとに残ったのは、少しだけ黒く濁った水晶だけだった。
先ほどまでの熱はなく、ひんやりとしている。

ニーナは小さく震える唇で呟いた。

「これだったのね……」

ニーナの触れていた土からは、もう瘴気の匂いはしない。

(久しぶりの浄化……)

今はもう失われた感覚に思いを馳せていると、フェルディナンドが同じく水晶を持って土に触れていた。

フェルディナンドの水晶も光り、瘴気を吸い取っていく。

「フェルにも出来るのね! すごいわ、ついに浄化方法を見つけたのよ!」

ニーナが声をかけると、フェルディナンドは険しい顔のままニーナに近づいてきた。
そして、何も言わずにニーナを抱きしめた。

「良かった……ようやくだ……」

小さく掠れた声がニーナの耳にそっと届く。
ニーナは思わずフェルディナンドの背中に両手を回した。

「本当にやり遂げたのよ。フェルが見つけたの。あーぁ、私の負けね」

涙声がバレぬよう、ニーナは明るくそう言った。



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