国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「僕もそれは不思議に思っていたんだ。 兄さんが国境まで行って確かめたんだけど、瘴気がこちらに流れてきている可能性は低いって」

マーティスの調査が確かなら、ルティシア国境の瘴気が流れてきたわけではなさそうだ。

ニーナは背中に嫌な汗が流れた。

「もしかして……いえ、何でもないわ」
「何? 言って。僕以外誰も聞いていないよ」

口ごもるニーナに、フェルディナンドは軽い雰囲気で続きを促した。
ニーナは少しだけ躊躇したが、フェルディナンドになら言っても良いだろうと判断した。

「森の瘴気は人工的に引き起こされたものかもって思ったの」
「どうして?」

ニーナはお茶を一口飲むと、今まで内に秘めていた考えを話し始めた。

「そもそもルティシアの瘴気って、都合が良すぎると思わない? あの瘴気はルティシアにとって恩恵しかないの。セレンテーゼや他国から侵略されずに済むのは瘴気のおかげでしょう? 聖女が瘴気から人々を守るから、人々は国や教会に感謝するし。もし国が意図的に瘴気を発生させているとしたら……。そして帝国への攻撃に利用したとしたら……」

ニーナは長年口にすることのなかった予想を初めて口にした。
瘴気を意図的に発生させられるだなんて、ルティシア国内では絶対に言えなかった言葉だ。

フェルディナンドの顔も険しくなる。



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