国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
ニーナと同い年くらいに見えた彼女は、300歳を超えていた。

「貴女が次の聖女……ごめんなさいね」

手を握られ力を渡された時、彼女はニーナの耳元で悲しそうに囁いた。
それがどういうことか当時は分からなかったが、今なら分かる。

(身体的な苦痛は慣れるけど……この寂しさはどうしようもない)

聖女の仕事はとにかく孤独だ。
治癒や浄化をすれば感謝される。けれども人々はニーナのもとからいなくなってしまう。

力を尽くして人々を治癒しても、彼らには寿命があるからだ。
日々を積み重ねて年老いていく人々を見ると、自分だけが置いていかれてる気持ちになるのだった。

(私だって大人になりたい。私だって……寿命を迎えたいわ)

先代の聖女はニーナに力を渡した後、別の国に行き、天寿をまっとうしたらしい。

それだけがニーナの希望だった。

(いつか次の聖女が誕生したら、私も他の国に行って好きなことをしよう!)

その希望だけを頼りに、毎日を淡々とこなしていたのだった。


◇◇◇




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