国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
(はっ……?)

ニーナは飲んでいたお茶がむせそうになるのをギリギリで耐えた。

「どう、とは?」

フェルディナンドはティーカップを少し乱暴に置くと、冷え切った声で言い放った。

「そう怒るな。ルティシアは今、先代の聖女を血眼になって探しているようだ。お前たちに外出を控えさせたもの、そのためだ」
「それで?」
「今宵のパーティー、表向きは単なる時候の挨拶だが、奴らは必ずニーナ・バイエルンを差し出せと交渉してくる。代わりにむこうが差し出すものは何だと思うかね?」

フェルディナンドは黙り込んだ。そしてニーナをちらりと見た。
ニーナは彼と目が合った時、彼の考えがよく分かった。

「聖女の力を貸そう、と言ってくるのですね」

ニーナが呟くと、皇帝は頷いた。

「不思議なことに、ルティシアは我が国の瘴気問題についてご存知のようだ。そして、まだ解決していないと思っているらしい。向こうは肝心の解決策すらも失っているのに大胆なことだ。虚言でもなんでも先代聖女を取り戻せれば、何とかなると考えているのだろう」
「まあ、こっちがこの情報を持ってるのも不思議だけどねー」

マーティスが空気を和らげるように笑っていたけれど、要はスパイがいるということだ。


< 110 / 175 >

この作品をシェア

pagetop