国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「参加するつもり?」

ニーナの前を歩くフェルディナンドから、無機質な声が聞こえてきた。

「フェルは参加したくない?」
「ニーナを連れていきたくない。何をされるか分からないのに……」
「私は大丈夫。それに、ルティシアの内情を知るチャンスなのよ?」

様子をうかがうようにニーナがそっと囁くと、フェルディナンドが足を止めた。

「一度参加すれば、このような機会はどんどん増える一方だよ。父は……君をとことん利用するつもりだ」
「別に構わないわよ」

ニーナにしてみれば大した問題ではない。
聖女として利用されるか、元聖女として利用されるかの違いだ。

どうせ利用されるなら自分を受け入れてくれたフェルディナンドの、ひいてはセレンテーゼのためになりたい。

「フェル、私ね……」

背中を向けたままのフェルディナンドに手を伸ばそうとしたその時、

「どうしてっ……!」

フェルディナンドは急に振り向いた見た。
その顔は悲しみで溢れている。

ニーナは、驚いて差し伸ばした手を止めた。

「どうしてそんなに自分を酷使するんだ! どうして自分を軽んじるんだ! どうして……君には平穏に生きてほしいんだ。巻き込みたくない。父は時に残酷なんだ。人のことなんて簡単に使い潰す」

フェルディナンドは苦しそうに顔を歪めた。

「フェル?」
「君が……貴女がやりたいことを妨げたくはありません。貴女が望むことは全て叶えたいのです。その手伝いなら何でもします。ですがっ……これ以上、ご自分を痛めつけないでください。どうか、お願いですから」

フェルディナンドはズルズルと崩れ落ちながら、せきを切ったようにニーナに懇願した。



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