国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「ちょうど今支度が終わったところよ。どうかしら?」

フェルディナンドの前でくるりと回ってみせると、彼は驚いたようにピタリと動きを止めた。 

「変……かしら?」

不安になったニーナがフェルディナンドの顔を覗き込むと、彼は真剣な表情のまま首を横に振った。

「まさか! とても素敵だよ。いつもと雰囲気が違うから驚いたんだ。深い青がよく似合うよ」

深海のような深い青色のドレスは、胸元に小さなダイヤモンドがちりばめられている上品なデザインだ。
ドレスなんて数えるほどしか着たことがなかったニーナには、これが似合っているのかはよく分からなかった。

「ありがとう。フェルも素敵よ。昔、本で見た大賢者様そのものだわ」

フェルディナンドは、大賢者の正装だという黒のローブを纏っていた。
袖口には金色の刺繍がしてあり、これが賢者の中での位を表しているのだとか。

「ニーナもいずれ着るようになるんだからね」
「楽しみだわ。ドレスなんかよりずっと良いもの」

二人して笑い合っていると、お世話係が「そろそろお時間です」と伝えてくれた。

「それじゃあ行こうか」

フェルディナンドはニーナに腕を差し出す。
ニーナはその腕をそっと掴むと、身体をぐっとフェルディナンドに近づけた。

そしてお世話係には聞こえない声でフェルディナンドに囁いた。

「王子と聖女にはルティシアと瘴気の秘密を洗いざらい吐いてもらうわよ!」



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