国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「マリアの様子はどうなんだ? 帝国から帰国して以降、ずっとうわ言ばかり言っていたが」
「変わりありませんよ。先代聖女様と何か話をされたのでしょう? よほどショックだったのか、一日中泣いたり叫んだり……かと思えばふさぎ込んでうわ言を言ったり」
「どいつもこいつも……一体どうしたら良いんだ!」

八方塞がりの状況に、アレクサンドロスは気が狂いそうだった。
大司教は相変わらず笑みを浮かべたまま、彼にそっと近づく。


「まだ方法はありますよ。それこそ、全てを一度に解決する方法が」

耳元で囁かれた言葉に、アレクサンドロスは大司教を睨んだ。

「お前の言葉は信用できない。もう散々だ! 瘴気の責任だって問われるかもしれないのに」

アレクサンドロスが目を背けると、大司教がゆっくりと近づいてきた。

「ですが他に方法もないのでしょう? このままでは陛下に本格的に見捨てられるのでは?」
「それはっ! ……父はまだ様子を見ている。それに、まだ瘴気の件までは耳に届いていないはずだ」
「それも時間の問題でしょう。良いのですか? あの国王陛下なら、貴方をどうやって切り捨てれば自分の身が安全か、考え始めるでしょうね」

アレクサンドロスは、父の冷たい目を思い出してぶるりと身体を震わせた。

大司教の言う通り、ルティシア国王は保身のために息子すら簡単に切り捨てる男だ。
瘴気の件が知られれば、もうアレクサンドロスはおしまいだ。

「……どんな方法なんだ」

苦しそうに吐き出された言葉に、大司教は笑みを深めた。


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