国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「帝国に大きな混乱をもたらすのですよ! それこそ聖女にしか解決できないような……。そうすれば、帝国は今度こそルティシアを頼ることでしょう。交渉次第で先代聖女様も引き渡してもらえるかもしれませんね。聖女の任務はニーナ様でもマリア様でも構いません。責任感のある方ならやり遂げるはずです。ほら、名案でしょう?」
「具体的にはどうするんだ」
「例えば……帝国中に瘴気をばらまいて、皆を病気にしてしまえば良い」
「な、なんだって? そんなことをしたら……」

アレクサンドロスは一歩、後ずさった。
大司教が一歩、近づいてくる。笑みを張り付けたまま。

「何を恐れているのですか? この間と同じことです。少し規模と作戦を変えるだけですよ」
「だがっ……」
「殿下、早く苦しみから解放されたいでしょう? 優しいマリア様に戻ってきてほしいでしょう? 何も考えずに暮らせる王子の立場を手放したくないでしょう? ……さぁ、早速準備を始めましょう」

大司教はアレクサンドロスの腕を掴んだ。
アレクサンドロスは力強く掴まれたことに顔をしかめたが、振り払わなかった。

「……そうだ。あぁ、そうだな」

アレクサンドロスの瞳からは、すでに光が失われていた。


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