国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
それから一週間後。
夜も更け、ニーナがベッドでうとうとしていた時――

ドンドンドン!

塔の扉を叩く音がした。


「こんな時間に……誰かしら」

眠たい目を擦りながら玄関に向かうと、ちょうどフェルディナンドも起きてきたところだった。

「ニーナは出ないほうが良い。どんな奴か分からないんだから」
「でも困ってる人かもしれないわ。この時間に来るのだから、緊急な用事かもしれないでしょう?」

ニーナが扉に手をかけて開けようとすると、フェルディナンドに阻止された。

「僕が開けるから一歩下がって。もう少し危機意識を持って。ルティシアの刺客の可能性だってあるんだから」
「それならこんな派手な音立てないでしょ?」
「囮かもしれないだろう? ほら、開けるから」

フェルディナンドはニーナを隠すように立つと、扉を開けた。

「あぁ大賢者様! どうかお助けください。妻が……妻が急に意識を失ってしまったんです。この時間ですから、どこの医院も人がおらず……どうか診ていただけませんか?」

そこにはぐったりとした女性を抱きかかえた男性が、息を切らしながら立ち尽くしていた。

フェルディナンドは彼らを見るなり、厳しい表情になった。

「とにかく中へ」

フェルディナンドはすぐさま彼らを部屋に案内すると、女性をベッドに寝かせた。

「一体何があった?」
「分かりません……急に倒れたのです。妻は夜食の片付けをしていて、そのまま……」
「ニーナ、状態の確認を」
「はいっ」

ニーナは女性の顔色や脈を確認する。
そして首元のボタンを外した時、ハッと息を呑んだ。

「これはっ……! フェル、ここを見て」

女性の首元は皮膚が赤く爛れていた。まるで真っ赤な薔薇のように。



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