国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
弁明してる間も微動だにしなかったフェルディナンドは、急にニーナを睨みつけると持っていた薬をぐいっと口に含んだ。

「フェ、フェル? なにを……! んん!」

フェルディナンドはそのままニーナに口づけた。
ニーナの口内に薬の苦味が広がっていく。

反射的に薬を飲み込むと、ようやくフェルディナンドの唇が離れた。

「っはぁ……ちょっと……!」
「こうでもしないとニーナは飲まないから」

フェルディナンドは平然とした様子で続けた。

「ニーナ、君はもう聖女じゃない。過去にあったことは変えられないから仕方がないけど、これからは違う。そんな風に痛みに鈍感になるな。慣れたって痛みは痛みなんだから」

フェルディナンドの真っ直ぐな眼差しに、ニーナは自然と「はい」と答えていた。

「それに、ニーナは僕の弟子でしょ? 勝手に病気になったり怪我したり、死んでもらったら困る。弟子を病気にさせる師匠なんて、この世にいないよ」
「はい……。そうよね、ごめんなさい」

気がつくと、ニーナの頬には涙が伝っていた。

(こんなにも本気で心配してくれるなんて……。私が愚かだったわ)

ニーナは自分自身を蔑ろにしたことを恥じた。
フェルディナンドの気持ちを踏みにじってしまったのだから。

「ご、ごめんなさい……。これからは、ちゃんと、自分の身体もしっかり労るわ。フェルに心配かけたくないっ……!」
「分かってくれたなら良かった。僕も無理矢理飲ませてごめんね」

フェルディナンドに抱きしめられ、その温かさにニーナはまた涙を流すのだった。





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