国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
早めにベッドに入ったニーナは、あっという間に寝てしまった。


「んー……良く寝た。良い天気ね」

久しぶりにぐっすり眠ったニーナは、すっきりとした気分で朝日を満喫する。

「昨日休んだ分、今日はしっかりと働こう!」

ニーナは早速気合いを入れて薬の準備に取り掛かった。
爛れてしまった首元はまだ痛むが、昨日よりマシになっている。

やはり薬を飲むのと飲まないのでは、治る速度が違うようだ。

「自分の身体で体感できるのは、聖女じゃなくなったおかげね」

鏡を見ながらニーナは微笑んだ。

(せっかく爛れた皮膚が少し残っているのだし、これで薬の実験が出来そうね)

なんの薬草で実験しようか悩んでいた時、ふとある考えが浮かんだ。

(瘴気による病にも水晶の効果ってあるのかしら? この爛れた皮膚の治癒って、出来たりしない?)

ニーナは実験室へ行き、残っていたルティシアの水晶を掴んだ。
そしてそのまま自分の首筋に水晶を当ててみた。

「熱っ!」

水晶が触れた部分が一瞬だけ熱くなったのだ。
慌てて水晶を離して鏡を確認すると、そこには綺麗な素肌が映っていた。

「治ってる……やっぱり」

水晶は瘴気を吸った時と同じように黒くくすんでいる。 
だが治療法として使うには大きな問題があった。

「これ……使いたいけど量が足りないわ。せめてルティシア産以外の水晶にも効果があれば良いのに」

ニーナは水晶をくるくると回しながら中をのぞき込んだ。
よく見ると水晶の中では黒い靄がふわふわとうごめいている。

「あ……」

その時ニーナは昔の記憶を思い出した。100年以上昔のことを――



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