国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
◇◇◇


ニーナが聖女になって約100年の時が過ぎた頃、当時の大司教と話す機会があった。

通常の大司教は、聖女に対してあまり干渉しない。
むしろ、ニーナは避けられているとすら感じていた。

司教の頃に気さくだった人も、大司教になるとニーナを避けるようになるのだった。

だが当時の大司教は違った。
ニーナが話しかければ親身になって聞いてくれたし、色々なことを教えてくれた。

『大司教様、どうして聖女は瘴気を浄化出来るのですか? 聖女の力とは何なのですか?』

久しぶりに大聖堂に寄ったニーナは、日頃の疑問を大司教にぶつけていた。
大司教はにこやかに答えてくれたが、この質問だけは少し困ったように笑っていた。

『ニーナは知りたがりですね。浄化の原理を知りたいのですか? こればかりは私には答えられません。全ては与えた力の一つなのですから』
『神様からですか? 聖女の力以外にも、与えられた力があるのですか?』
『ありますよ。例えばこの大聖堂。ここは周囲が瘴気に飲み込まれても、不可侵な結界で安全だと言われています。他には……聖紋もですね。この形を刻めば、邪悪なものから守られるとされています。だから各地の教会には、この聖紋が掘られています』
『聖紋……聖書の表紙にある模様ですか?』
『そうです。ニーナも大切な物に聖紋を描くと良いかもしれません。まあ、貴女は聖女ですから必要ないかもしれませんが――』


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