国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「それはすごい発見だ! 早速患者に使おう。塔にあった水晶は僅かだから、兄さんに連絡して持ってきてもらうよ。瘴気浄化に使った水晶を城で保存しているはずだ」
「良かった。水晶の数が増えれば心強いわ! 私は先生に使い方を教えてくる!」

そこから街の人々の回復スピードは、驚く程速くなった。
今まで完治まで一週間程かかっていたのが、即日回復するようになったのだから。

「おぉ! 痛みが嘘のようにひいたぞ! まるで魔法のようだ」
「先生、大賢者様、ありがとうございました! 娘に傷跡が残らなくて本当に良かった……」

人々が笑顔で医院から出ていくのを見ると、ニーナは心から良かったと思えた。

「患者数はだいぶ減りましたね」
「大賢者様たちのおかげです。あとは瘴気の発生源を突き止められれば良いのですが……」

医師が心配そうに呟くと、フェルディナンドはにっこりと微笑んだ。

「そちらの方は我々にお任せください。すぐに解決しますから」

そう言ってのけたフェルディナンドの瞳は、全く笑っていなかった。

(怒ってる……これは相当キテる。気持ちは分かるけど)

症状の発生範囲を見る限り、これは明らかに作為的なものだ。

いくら封鎖したといっても、通常の感染症なら少しずつ他の地域に広まっていくものだ。
しかし今回の病は、感染者が増えても、ファイズの街以外には被害が広まらなかった。

これはセレンテーゼ帝国への攻撃なのだ。
ルティシアからセレンテーゼへの宣戦布告とも取れる。
少なくとも皇帝はそう解釈するだろう。

(戦争になっちゃうのかしら)

どちらの国であっても、民たちが巻き込まれるのは見ていられない。

「フェル、皇帝陛下のところに行くのでしょう? 私も連れて行って」
「ニーナも? どうするつもり?」
「陛下に話を。戦争を回避したいの」
「……分かった」



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