国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「では肝心の国王は何をしていた? なぜ王子を咎めないのだ。民に罪はないと言うが、彼らはなぜ自らの状況を国に訴えないのだ。お前なら分かっているだろう? それが答えだ。救う価値がない」
「陛下のお言葉はもっともです。ですから私は嘆願することしか出来ません」
「なぜルティシアの民を庇う? お前を追放した国など、どうなろうと関係ないはずだ」

まるでニーナを挑発するような発言だ。
だがニーナは静かに返した。

「仇もありますが恩もあります。ただそれだけです」

ニーナの真っ直ぐな言葉に、皇帝はしばらくニーナを見つめていた。
そして少し俯くと、「クックック」と喉を鳴らして笑い始めたのだ。

「なるほど、さすがはフェルディナンドが見込んだ者だ。お前の意見は分かった。こちらもお前には多大な恩がある」
「では……」
「一週間後、ルティシアから使者が来る。その時、お前が納得出来る判断を下してやろう。だから安心しなさい」


ニーナは皇帝の前に進み出た。
そして両膝をつく。そして両手を額の前で組むとそのまま頭を下げた。
これはセレンテーゼ帝国で最敬礼の一つだった。

「陛下の寛大なお心に感謝いたします」

ニーナは安堵で声が震えるのを必死に抑えていた。

「ニーナ・バイエルン、頭を上げよ。そのような礼は無用。我らは我らの利があるように動くだけだ。……フェルディナンド」
「はい。……ほら、ニーナ立って」

なかなか頭を上げないニーナにフェルディナンドが手を差し伸べる。
ニーナはその手を取って立ち上がった。

「セレンテーゼ帝国には偉大な君主がおられます。これからも末永く繁栄するでしょう」
「まるで祝詞だな。元聖女のお言葉だ。ありがたく受け取るとしよう」



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