国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
10.真実
セレンテーゼ帝国とルティシア国との交渉数日前、アレクサンドロスは、震える手を抑えながら度数の高いワインをあおっていた。

「本当に大丈夫なのか……? いや! 俺は……俺は、ついに、帝国の街に瘴気を撒き散らしたぞ! これでニーナ・バイエルンが戻って来る! 聖女を押し付けりゃ、こっちのもんだ」

乱暴にグラスを置くと、中のワインが飛び散った。
アレクサンドロスはズキズキと痛む頭をかかえて長く息を吐く。

「あぁ……早く終われ……こんな生活」

そうして気がつくと、アレクサンドロスは眠ってしまった。


◇◇◇


コンコン、カチャ

扉をノックされ、返事を待たずに扉が開く。

「誰だ? ……マ、マリア!?」
「アレクサンドロス様、お久しぶりです」

ペコリと頭を下げたマリアは、初めて会った時のように晴れやかな顔をしていた。

「マリア……もう大丈夫なのか? ずっと様子が変だったが」
「様子が変? そうでしたか? うふふ、アレクサンドロス様こそ何か変ですよ? こんなにお酒を飲んでしまうなんて、心配です」

マリアはアレクサンドロスに駆け寄ると、心配素に顔を覗き込む。
アレクサンドロスはボロボロと涙を落とした。

「あぁマリア……俺は君とともに生きるために、何でもやったんだ! だが、それは悪い事なのか!?」
「私、アレクサンドロス様が何を言ってるのか分かりませんわ。でも、アレクサンドロス様は悪くありません。それは絶対です!」
「そう、だよな。俺は……俺は、出来ることをやっただけだ。 あぁマリア、手を握ってくれるかい?」
「えぇ、もちろんです」

マリアはそっとアレクサンドロスの手を取った。
……はずだった。




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