国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「マリア? ……マリア?」

触れられているはずなのに、何の感触もない。
アレクサンドロスがマリアに手を伸ばすと、彼女の身体がだんだんと透けていった。


◇◇◇


「マリア……!」
「おや、起こしてしまいましたか?」

アレクサンドロスが手を伸ばした先には大司教が立っていた。

「大司教……何の用だ。マリアは!?」
「おやおや、夢でも見ていたようですね。彼女なら大聖堂におりますよ」
「夢? あんなに鮮明な? 嘘だ、マリアがここに! 優しかったマリアがっ!」

あたりを見渡してもマリアはどこにもいない。

取り乱すアレクサンドロスに、大司教は聖母のような微笑みを投げかけた。

「夢で会えたのですね。殿下、次の帝国訪問が上手くいけば正夢になるでしょう」
「ほ、本当か?」
「えぇ。皇帝に直接我らの力を示すのです。決して怖気づいてはいけません。堂々と振る舞っていれば良いのです。そうすれば帝国は降伏し、殿下の立場は守られる。殿下に寄り添ってくれるマリアも、元に戻りますよ」

優しいマリアが戻ってくる。
その言葉は今のアレクサンドロスにとって、甘美なものだった。

「そうだ、そのはずなんだ!」
「えぇ、えぇ、そうですとも。必ず取り戻しましょうね」

優しくアレクサンドロスの言葉を肯定した大司教は、柔らかい口調で彼を励まし続けた。


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