国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
交渉の場が設けられたのは、ニーナが皇帝に嘆願した日から一週間後のことだった。

ルティシアから来たのは、アレクサンドロス王子、聖女マリア、そして大司教の三人だった。

こちらは皇帝とニーナのみ。
アレクサンドロスは、ニーナと目が合うと忌々しそうな視線を投げかけてきた。
マリアはずっと無表情で、虚ろな目をしている。

(こんな状態なら聖女を連れてこなくても良いのに……)

この人選でまともな話し合いが出来るのか、という一抹の不安がよぎった。


「ようこそ我がセレンテーゼ帝国へ。そこの二人は数週間で随分と雰囲気が変わったな」

皇帝の言葉で交渉がスタートしたが、そこを流れる雰囲気は複雑なものだった。

「……お久しぶりです。本日はよろしくお願いします」

アレクサンドロスは不貞腐れたように返事を返す。
マリアにいたっては、コクリと頷いただけだ。
それでも皇帝は上機嫌だった。

挨拶もそこそこに、皇帝が早速本題を切り出す。

「我が国ではここ数ヶ月、誠に不思議な現象に悩まされていた」

低い声が部屋に響くと、アレクサンドロスが身体を震わせた。

「調査の結果、なんと我が国に瘴気が蔓延っていたのだ。長年、ルティシア国境にしか存在しないと言われて瘴気が、だ」
「それはそれは……大変でしたね」

黙り込むアレクサンドロスに代わって、大司教が相槌を打つ。



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