国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
久しぶりの塔の外は、晴れ渡った空がとても綺麗だった。
ニーナは街並みを楽しみながら、フェルディナンドの後をついていく。

(帝国に来た日は大賢者様探しに必死だったから、全然街を見ていなかったのよね)

ファイズという街は賑やかで、どこを見ても活気ある。見ているだけで元気をもらえる場所だ。

ウキウキと歩いていると、前を歩いていたフェルディナンドが歩みを緩めた。

「あそこが薬屋なんだけど……なんだ?」
「うん? なんだか揉めているみたいね。喧嘩かしら?」

薬屋の前では二人の男が言い争いをしているようだった。
片方の男は右腕を包帯でグルグル巻きにしている。その包帯には血が滲んでいた。

「頼む! もう限界なんだ。金はこれしかないが、買えるだけくれっ……!」

包帯の男が懇願するように叫んでいる。
もう片方の男が薬屋の店主なのだろう。困惑したように後ずさった。

「譲ってやりたいが、これ以上使うと副作用が出る。使い過ぎだ」
「副作用なんて構うもんか! もう痛くてたまらないし、血も止まらないんだ!」
「だがなあ……」

悩ましげな店主と苦痛に顔を歪める男。
ニーナは思わず声をかけた。


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