国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「あの、なにかお困りですか?」
「んん? お嬢ちゃん誰だい? ……っ! 大賢者様!」

ニーナをいぶかし気に眺めていた店主は、後ろのフェルディナンドに気づき頭を下げた。
包帯の男も目を見開いてフェルディナンドを眺めている。

「なにか揉め事か?」

そう発したフェルディナンドの声は、威厳に満ちていた。
先ほどまでニーナと話していた時の優しい声色は隠れ去ってしまったようだ。

「この人の怪我が治らないのです。止血しても血が止まらず、痛み止めを飲んでいますが、効果が薄いようで。これ以上服用すると副作用が……あ、ちょっと!」

店主がフェルディナンドに説明をしていると、包帯の男が必死の形相でフェルディナンドの足元に縋り付いた。

「大賢者様! どうか俺を助けてください。この怪我を治してください! お願いしますっ」
「お、落ち着いて。……申し訳ありません。ですが、私からもお願いです。どうかお力添えください」

店主は慌てて男を引きはがすと、再び頭を下げた。

フェルディナンドは気にした様子もなく、ニーナの方を向く。
彼は「やってみるかい?」という目つきでニーナを見ていた。

ニーナの心臓がドキリとはねる。それでもしっかりと頷くと、フェルディナンドが少し口角をあげた。

「ニーナ、彼らから聞き取りを」
「はい! 怪我した時の状況を教えていただけますか?」

ニーナはしゃがみ込んで包帯の男に尋ねる。
少し冷静さを取り戻した男は、状況をぽつりぽつりと話し始めた。


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