国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「俺は先週まで西の方に出稼ぎへ行っていたんだ。そこから帰る途中、ロッカリー平原で転んで……その時腕に石が刺さったんだ! かすり傷だったが、ちっとも治りゃしない。ずーっと血がにじんでくるんだ」
「ロッカリー平原というのは……乾燥地帯ですか?」
「そうだ。なんにもねぇ場所だな」
「傷口を見せてもらえますか?」
「いいぜ」

ニーナはそっと包帯を解いて傷口を確認した。確かにかすり傷だ。
しかし普通の傷ではない。血が滲んで見えにくかったが、傷口がわずかに紫がかっている。

その傷はニーナにとって見覚えのあるものだった。

「この傷はただのかすり傷ではありません。毒に侵されています。傷口の治りが遅いのはそのせいでしょう」

店主と包帯の男はニーナを不審そうに見た。大賢者の従者らしき人物が、いきなり診察まがいのことを始めたのだから無理もない。

「お嬢ちゃん、なぜそんなことが分かるんだい?」

包帯の男が自身の傷とニーナを交互に見ながら尋ねた。

「傷口の形状と色です。かすり傷口を囲うように別の傷があります。点状で紫色の傷。これはハリムカデによるものでしょう」
「ハリムカデだと? ロッカリー平原に出るなんて聞いたことがない。なあ大賢者様、このお嬢ちゃんの言ってることは本当なのか?」

包帯の男がフェルディナンドの方を向く。

フェルディナンドは男の傷を確認すると、ゆっくりと頷いた。


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