国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「彼女の言う通りで間違いないだろう」
「じゃ、じゃあどうしたらいいんだ……」

ニーナは状況を見守っていた薬屋の店主に駆けよった。

「アーロニアと……チリカは売っていますか?」
「チリカはあるが……アーロニアか。少量ならあるはずだ」
「では同量を混ぜてすり潰していただけますか?」
「ええ? いやぁ、そんな処方は聞いたことがない。それに彼は、もう支払う能力がないんだ」
「お願いします! 責任は私が持ちます。お代もお支払いしますから」

ニーナは渋る店主を店内に押し込んだ。
そして店内の棚から素早くアーロニアとチリカを見つけると、店主の前に差し出した。

その手際の良さに、店主は「まいったな」と言いながら薬草をすり潰し始める。

(処方が違っていたら……。いいえ、大丈夫よ。フェルも間違いないって言ってくれたもの)

ニーナは緊張で身体が冷たくなっていた。

こんな時、聖女の治癒能力が使えたらどれほど楽か。その思いが頭をかすめたが、ニーナは小さく首を振った。

今の自分に出来ることをやるしかない。出来ることを増やすしかないのだ。

「ほら、出来たよ」
「ありがとうございます!」

店主から薬を受け取ると、急いで外に出た。


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