国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
(お、お金のこと忘れてた……。思ったより高い! 塔に戻らなきゃ払えないわ)

青い顔で固まっていると、フェルディナンドが横からすっと手を差し出した。

「銀貨500枚だ。残りの金でチリカをもらおう」
「大賢者様……! かしこまりました。すぐ用意いたします」

店主は銀貨を確認すると、ホッとした顔で店内へと戻っていった。

「あ、ありがとう。後で必ず返すわ……」
「構わないよ。それよりあの処方、良く知っていたね。アーロニアを選択したのは良い判断だった」

褒められてニーナの顔が少しだけ赤く染まる。

「チリカと合わせたのは初めてだったの。でも、アーロニアはルティシアにいた頃よく使っていたのよ」
「そうなの? 治癒能力があるのに薬を処方していたんだね」

フェルディナンドが意外そうに呟いた。

「簡単なものだけよ。各地を歩いて回っていると、再訪するまでに期間が空いてしまうでしょう? だから皆が自力で怪我や病気を治せるように、手に入りやすい薬草を教えていたのよ。治療法や予防法が広まれば、皆が楽になるから。本当は全て治癒出来たら良かったのだけれど……限界があるもの」

ニーナは少し俯いた。聖女として各地を回っていた頃、よく皆から文句を言われたものだ。


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