国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
『もっとたくさん来てくれよ! これじゃあ治癒してもらえるかは時の運じゃないか』
『薬の作り方なんて教える暇があったら治癒してくれればいいのに』
『聖女様は治癒を渋っているんだ』

そう言われる度に、ニーナは謝りながら処方を教えるしかなかった。

(皆を救うにはこれしかない。治癒はしてあげられなくても、助かる方法を教えることは間違ってないわ!)

その思いでずっと薬学や病気について学んできたのだ。

そうして長い間学ぶ中で、セレンテーゼ帝国の大賢者について知ったのだ。

特別な力がなくても、知識や経験で人々を救う存在。
ニーナにとって大賢者は憧れだった。

(今目の前にいるフェルは、私なんかより尊い立場の人だわ)

ニーナは黙り込んだ。
その時、ふわりと頭に柔らかい感触がした。

「顔を上げて。やっぱりニーナには賢者の素質があるね」
「え?」

顔を上げたニーナの目の前で、フェルディナンドは眉を下げて困ったように笑っていた。

「まったく……一体今までどんな人生を送ってきたのやら。どれくらい知識があるのか確かめようと思っていたのに、想像以上だったよ。ははは」

そのまま頭を撫でられ、ニーナはじんわりと身体が熱くなる。

「ただ長く生きてるだけよ。独学だから知識は偏っているし、抜けていることも多いわ」
「それを補うのが僕の役目でしょう? さて、そろそろチリカをもらって帰ろうか」



< 32 / 175 >

この作品をシェア

pagetop