国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
帰り道、ニーナはフェルディナンドと並んで歩いた。

フェルディナンドが話してくれる街案内を聞いたり、時折目に入る植物の効能を言い合ったりする。
ニーナはどんどん入ってくる知識を、夢中で飲み込んだ。

「そういえば、薬屋の店主から問題解決のお礼にいくつかハーブをいただいたんだ。勉強になったって。弟子のお嬢さんによろしくってさ」

ほら、と見せられたカゴの中には、料理にも使えるハーブがいくつか入っていた。

「わぁ……! 美味しそうなハーブがいっぱい! ねぇ、肉屋に寄ってもいい? 今日は私が夕飯を作るわ!」
「おや、薬学だけでなく料理も出来るのかい?」
「意外かしら? いつもはフェルが作ってくれているでしょう? 今日は私が腕を振るうわ」

からかい混じりの声に、ニーナも笑って答えた。


いくつか店に寄ってゆっくり帰ったのに、あっという間に塔に着いてしまった。

(色々あったけれど楽しかったわ。久しぶりの外出だったものね)

ニーナはほんの少しの名残惜しさを振り払うように、夕飯の下準備を始めた。


< 33 / 175 >

この作品をシェア

pagetop