国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
何か困らせただろうかとニーナが思い始めた頃、フェルディナンドがニーナを見た。

複雑そうなその顔は、何を考えているのかよく分からない。

「教えてくれてありがとう。ニーナはルティシアをよく見ていたんだね」
「そうかしら? 人より長く見ていただけよ。200年以上、ずっとルティシアで生きていたんだもの」

普通の人よりもずっと、ルティシアの人々の生活を見守ってきたのだ。

ルティシアがもっと良くなれば……という気持ちは、ニーナの心の中にずっとあったのだ。


「聖女は……辛かった?」

フェルディナンドの口からぽつりと出た言葉に、ニーナは思わず微笑んだ。

「いいえ」

きっぱりと言い切ると、フェルディナンドは意外そうな顔をした。

「確かに寂しさはあったけれど、辛さも後悔もないわ。文句言われることもたくさんあったけれど、感謝されることもあったんだもの」

人の役に立つことは自分のためになる。それは両親から受け継いだ大切な教えだ。
だから聖女として生きたことが辛かったとは思わなかった。

(そういえば、ものすごくお礼を言ってくれた親子がいたわね。もう十年以上前かしら……懐かしい。あの子は元気かしら?)

ニーナはふと昔のことを思い出した。



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