国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
4.大賢者のもう一つの姿
フェルディナンドとともに暮らし始めて一ヶ月。
ニーナはフェルディナンドのことを少しずつ知っていった。

フェルディナンドは基本的に塔で過ごしてるが、皇帝から相談という名目で呼び出されたりすることもある。
大賢者の一番大きな仕事は政治なのだ。

外での仕事がある時のフェルディナンドは、いつもよりほんの少しだけ機嫌が悪い。

ニーナに対しての態度は変わりないが、一人でいる時に短いため息を吐くのを何度か目撃した。

(皇帝陛下からの難しい相談に乗ったりするみたいだし、大変なのかもしれないわ)

そんな日には、いつもニーナが夕食を用意した。メニューには羊肉を必ず入れる。
フェルディナンドは羊肉が好きなようだったから。

『思い切り噛みちぎれるのが良いよね。こう……ガブっと! ね?』

なんて言っていたから、彼なりのストレス解消法なのかもしれない。

そして夕食をいつもより多めに食べたフェルディナンドは、翌日のんびりと小説を読んで過ごす。

「今日はどこにも出かけるつもりはないから」
「えぇ、そうしましょう」

ニーナはそんな彼の隣で勉強するのが好きになった。

何を話すわけでもない。
ただ隣に座って思い思いのことをしているのが、心地良かった。

(ずっとこうしていたいなぁ……)





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