国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
◇◇◇


昨夜、誕生祭のために大聖堂へと戻ってきたニーナのもとに血だらけの少女が運び込まれてきた。

「聖女様、この少女をお助けください!」
「ひどい怪我……! 一体何があったのですか?」
「分かりません。大聖堂の前で倒れていました」

神官たちの話によると、夜の見回りの最中に見つけたのだとか。

とにかく急いで治癒を施すと、ぐったりとしていた少女がパチリと目を開けた。

「あぁ聖女様! お助け下さったのですね。ありがとうございます!」
「え? えぇ……」

キラキラとした目でニーナを見つめる少女は、確かどこぞの男爵令嬢だ。
彼女はとても不自然だった。

まず貴族のご令嬢が血まみれになるような事件が起きれば、周囲はもっと騒然としているはずだ。それなのに、大聖堂の周囲はいつものように静かだった。

その上、少女の怪我は見た目だけだったのだ。治癒してみると、実際の傷は単なるかすり傷だ。とても大出血をして失神するほどではない。

(一体何があったのかしら? 誰かにいじめられて、ショックで気を失ったとか?)

事情を聞いていいものか考えあぐねていると、少女はニーナにぐっと手を差し出した。
その手にはひび割れた水晶が握りしめられている。



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