国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
ある日、塔に一人の男が訪ねて来た。

「こんにちは。おや? 君が噂の……はじめまして、お嬢ちゃん」

その男は出迎えたニーナを見るなり、軽い口調で恭しく礼をした。
そのチグハグさは、まるでニーナをからかっているようだった。

男はフードをかぶっていたが、ニーナはひと目で貴族だと気づいた。
ちらりと見える服装はかなり上質な装いだったからだ。

「大賢者様に何かご相談ですか?」

面倒事はごめんだ。
内容によっては帰ってもらおうと質問すると、男はにっこり微笑んで塔の中へと入ろうとした。

「ちょっと……!」
「大丈夫大丈夫。僕はフェルディナンドの知り合いだから〜」

ニーナを静止を振り切って、どんどん中へと進んでいく。
そして勝手知ったる様子で客間へ入ると、我が物顔でソファーに腰を下ろした。

(塔に不審者を入れてしまった! ど、どうしよう?)

ニーナが客間の入口で右往左往していると、フェルディナンドがやってきた。

「どうかしたのですか?」
「フェル! あ、あの……見知らぬ方が入ってきて……!」

ニーナが客間の中を指差すのと、フェルディナンドが眉をひそめるのは同時だった。

フェルディナンドは客間に入るとソファーでくつろいでいる男に声をかけた。
 
「……どういう風の吹き回しですか?」



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