国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「そろそろ帰るよ。久々に素のフェルディナンドと話せて良かった」
「……いつでも来てください。連絡さえしてくれれば、歓迎しますから」

ニーナはマーティスを夕飯に誘ったのだが、「これ以上邪魔したら悪いから」と断られてしまった。

そしてマーティスは、ニーナにこっそりと「フェルディナンドをよろしくね」と耳打ちして去っていった。

(お世話になっているのは私の方なのに……?)

去っていく馬車を見送りながら、ニーナは首を傾げる。

「そろそろ中に戻ろうか」
「そうね」

ニーナは塔の中へと戻っていくフェルディナンドの後を追いかける。
その背中がマーティスと重なった。

フェルディナンドが皇族として過ごしていたら、あんな姿だったのだろう。

「あの……フェルはどうして賢者になったの?」

聞こえないくらい小さな声で尋ねると、フェルディナンドはゆっくりと振り向いた。

「……内緒」

口に人差し指を当てて笑うフェルディナンドに、ニーナはそれ以上何も聞けなかった。


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