国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
夜、フェルディナンドは深い寝室でため息をついた。

突然の兄の訪問が訪問してきて、ニーナに知られてしまったのだ。
自分が元皇子であるということを。

「まぁ隠し通せるわけなかったんだ。それでも……」

フェルディナンドはソファーに深く腰掛け目を閉じた。

ニーナは思い出してしまっただろうか。
昔フェルディナンドと会ったことを。絶望の縁からフェルディナンドを救ったことを——


◇◇◇


フェルディナンドは生まれつき身体が弱かった。
心臓の動きが不安定で、呼吸も時折おかしくなる病だったらしい。

皇帝が帝国中の名医を集めて治療させたが、完治はしなかった。

生まれた時は金髪だったらしい髪の毛も、色が抜け落ちて銀髪になったと聞いた。
フェルディナンド自身は記憶がある頃からずっとこの色だから、違和感はない。

(周りはずいぶんと煩かったな。たかが髪色にばかばかしい話だ)

『誇り高きブルグント一族の特徴といえば、輝く金髪! あれこそ国を治める者の証だ。それなのに第二皇子は……』

などと言われるのは日常茶飯事だった。

(まったく意味が分からない。髪色と政治の才に因果関係などないだろうに)

フェルディナンドは身体と虚弱さとは反対に、実に聡明に育っていた。
剣術の鍛錬が出来ない代わりに学問に割く時間が長かったからだろう。

いつか皇帝となる兄を支える存在になるため、幼い頃から本を読み漁り、学者と議論をしていた。

虚弱なら虚弱としての生き方を身につければ良いだけ。そう思っていた。


だがそんな思いは十二歳の時に打ち砕かれた。



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