国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
『このままでは……もって一年でしょう』

急激な体調の悪化で医師の診断を受けた時には、身体が限界を迎えていたのだ。

原因も分からない。当然、治療方法もない。

(僕の人生、ここまでか)

この世にはどうにも出来ないことがある。
フェルディナンドは運命の残酷さを痛感した。

恐怖はなかったが、家族に申し訳がないと気持ちは抜けなかった。
じんわりとした絶望が徐々にのしかかってくるのを、ただ耐えるしかなかった。


それでもフェルディナンドは運命を受け入れた。
そうする以外、道はなかった。はずだったから――

『諦めないでちょうだい。まだ希望はあるわ! ……ルティシアの聖女のもとに行くのよ!』
『来月、ルティシア国王の生誕祭に呼ばれてるんだ。フェルディナンドもお忍びでおいで。俺が上手く隠してあげる』

フェルディナンドの母も兄も、諦めてはいなかったのだ。

『聖女に? 無理でしょう。ルティシアの聖女はルティシア人しか治癒を施さない』

通常、ルティシアの聖女は他国の人間を治癒したりしない。国が厳しく制限しているからだ。
いくら帝国の皇子といえど、認めてはもらえないだろう。

下手をすればルティシアに弱みを握られることになる。

兄の従者のフリをしてお忍びでルティシアに入国し、聖女を探し出して治癒を依頼する。それはリスクが高すぎるし、成功する可能性は限りなく低い。

それでも家族は、作戦決行を決めたのだ。

『病に打ち勝つことがお前の責務だ』

父は立場上、表立ってルティシア行きを支援したわけではないが、その言葉の意味はよく分かった。



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